以下のような噂があります。事実でしょうか?都市伝説でしょうか?
- スイッチング電源より、リニア電源の方がノイズが少ない
- ラズパイのmicroUSBから給電するより、GPIOから給電した方がヒューズとMOS FETをスキップできるのでノイズが少ない
- ラズパイとDACのアナログ部を分離給電すると、ラズパイのレギュレーターの悪影響を排除できるのでノイズが少ない
ここでいう残留ノイズとは、電源が直接出すノイズのことではなく、ラズパイとDACを経て最終的にDACのLineアウトから出てくる残留ノイズのことをさします。気になるので調べてみました。
DACはHiFiBerry DAC+ Proを使用。
使用した電源は2種類:
- ダイソーで300円で売っている2.4AのスイッチングACアダプター(上の写真の左)
- L.K.S Audio製 LPS-25-USB 5V/3.5Aのリニア電源(上の写真の右)
給電方法は3通り:
- ラズパイのmicroUSBから、HiFiBerry DAC+ Proにも給電
- HiFiBerry DAC+ Proの+5V/GND端子から、GPIO経由でラズパイにも給電
- HiFiBerry DAC+ ProのR14抵抗を除去して、ラズパイとHiFiBerry DAC+ Proに別々に給電
(HiFiBerry DAC+ Proの分離給電方法は こちら を参照ください)
電源(2)×給電方法(3)=6通りのパタンで残留ノイズを測定しました。測定方法は、
- オシロスコープ(Tektronix TBS 1052B)でPeak to Peak (Pk-Pk)を測定
- プローブは標準の10:1プローブを試したところ環境ノイズを拾うので、代わりにBNCケーブルを使用
- ラズパイからは無音の(値0の)WAVファイルを再生して約20秒間隔で10回Pk-Pkを測定し平均をとる
さて、結果をみて行きましょう。
まずはダイソーのACアダプタからラズパイのmicroUSB経由で給電します。DACのLine出力にもかなり明確なスイッチングノイズを確認できます。Pk-Pkで約13mVの残留ノイズがあります。
次にHiFiBerry DAC+ Proに給電し、GPIO経由でラズパイにも給電です。残留ノイズはほとんど変わらず、むしろ微増でPk-Pkで約14mVです。
次にL.K.Sのリニア電源で試してみます。ラズパイのmicroUSB経由で給電しても明確に残留ノイズが減っており、Pk-Pkで6mVです。
ただラズパイのレギュレータの影響か、若干のノイズが残っています。これはDAC/GPIO経由の給電で解消できるでしょうか?
結果は効果なく、DAC/GPIO経由でも残留ノイズはまったく変わらずPk-Pkで6mVです。
次いで分離給電です。HiFiBerry DAC+ ProのR14抵抗を除去し、ラズパイの電源とDACのアナログ部を分離します。ラズパイにはスイッチング電源で給電し、HiFiBerry DAC+ Proにはリニア電源で給電します。結果、スイッチングノイズは無くなり、Pk-Pkはなんと1.8mVです。(左)
次いでHiFiBerry DAC+ ProにダイソーのスイッチングACアダプターから給電してみます。驚いたことに非常に良い結果が得られ、若干のスイッチングノイズは残りますが、Pk-Pkで5.4mVでした。
結果をまとめると左のようになります。残留ノイズに関して言えば、当初思っていた以上にリニア電源と分離給電の効果は高いです。
ただし、この残留ノイズが実際のリスニングにどの程度の悪影響があるか?は別問題です。実際に聴き比べてみました。アンプはDENON PMA-800NEです。まずはダイソー電源&microUSB給電から。第一印象は「これで十分じゃない?」残留ノイズによる悪影響はないようです。次いでリニア電源&分離給電。クリアな音ですが違いはよくわかりません。ここまでやる価値があるか?というと無いような気もする。ここまで計測しておいて、結果も出しておいて、ちゃぶ台返して申し訳ありませんが...
可聴域への影響を定量的に調べたいのですが、現状は可聴域の歪みやSN比を簡単に測定できる環境がありません。yaMPC 1.2の開発が一段落したら、次回はTHD+Nで比較してみたいと思います。
では、締めに最初の疑問に戻りましょう。
- スイッチング電源より、リニア電源の方がノイズが少ない → 事実
- ラズパイのmicroUSBから給電するより、GPIOから給電した方がヒューズとMOS FETをスキップできるのでノイズが少ない → 嘘
- ラズパイとDACのアナログ部を分離給電すると、ラズパイのレギュレーターの悪影響を排除できるのでノイズが少ない → 事実
2019.05.23 誤記訂正
宿題であったTHD+Nを測定しました。こちらを参照ください。2022.11.13追記